解っている。

そう、頭では、理解しているのだ。

仕方のない事なのだと。

諦めねばならない事なのだと。

理解は、している。

それでも。










† 遠き聖者に祝福を †










久々に、そう、数ヶ月ぶりに東方司令部へと姿を現した鋼の錬金術師は、挨拶もそこそこに応接用の机にへばり付いた。
丁度昼食時で、司令室内には件の少年と、外回りから帰還したばかりのハボック少尉しかいない。
少年の弟は、珍しい事に宿で留守番をしているらしい。

「少尉ー」
「あー?」
「今日って何日だっけー?」
「は?今日?・・・あぁ、報告書か」
「そうそう」

あのクソ大佐、日付がないからって突き返しやがったんだ面倒くせぇ。
そう悪態を吐きながら、ペンの背で自分の頭をガリガリと掻く少年。
紫煙を天井に向けて吐き出した少尉は、さて、今日は何日だったっけか、と卓上のカレンダーを片手で引きずり寄せた。

「あー・・・14日、だな」
「14日?サン・・・」

礼を述べる途中で固まる少年。
それに、怪訝そうな視線を送る少尉。

「何か問題でも?」
「あ、いや、別に、何も、ない。うん。14日だな、サンキュ」

だから気にするなと、視線も向けずに手を振り否定されれば、後は何を言いつのる必要性も感じられず、曖昧な不自然さにも眼をつぶるしかない。

「あ」
「あ?」
「・・・あー、そうそう」
「・・・何?」

唐突に何やら思い出したらしい少尉は、勝手に自分一人で自己完結し、少年の疑問詞には反応せず、銜えていた煙草を灰皿でもみ消した。
怪訝そうに、革張りのソファ越しに顧みる少年。
机の中を漁っていた少尉は、目当ての物を見つけたのか、短く口笛を吹き、立ち上がった。
ゆるやかに引き結んだ唇を持ち上げ笑みを形作った少尉が自分の元へ歩み寄ってくる様を、首を傾げ見上げる少年。

「ほれ」

差し出されたのは、小さな封筒。

「・・・何コレ」
「じゃ、俺は飯食ってくるから、誰か戻って来るまで留守番頼むわ」
「あっ、オイこら待てよっ少尉っ!?」

ぽんぽんと二度、軽く少年の頭の上で掌を弾ませ、少尉は早々に司令室を後にした。
残された少年がソファから身を乗り出し呼び止める声は、呆気なく扉に阻まれ床に落ちた。

「何なんだよ・・・」

左手で頭をガシガシと掻き、右手で受け取った小さな封筒を左右に振る。
訳が解らん。呟きながら、少年は封筒を開いた。
入っていたのは、紅のカードが一枚。
金色の細い文字で、少年の名が記されている。
酷くシンプルな其れを、少年はゆっくりと開いた。
そして、硬直。

「や・・・られた・・・っ」

舌打ちをし、カードを乱暴に、しかし角が折れてしまわぬように気を遣い封筒に戻す少年。
その頬は、うっすらと、赤く。

「何だよ・・・ゼッテェ忘れてると思ってたのに・・・ッ」

カードには、見慣れた文字で綴られた、ただ一行の文章。
嗚呼、そうだ。
今日は、大昔の聖者の冥福を祈る日。
死を待つだけに成り果てた戦地へ送り出される男達と恋人達を、密かに祝福し契りを結ばせたが故に処刑された聖人の命日。
国から祝福されぬ恋人達が、境遇を同じくする物同士で祝福しあい、穏やかな喜びに満たされた日々の、終焉。
いつからか、恋人達が浮かれ騒ぐだけの祝日になってしまったけれど。

「くそぅ・・・忘れてたのは、俺だけって事かよ・・・」

常に移動を繰り返し、一所に留まらぬ自分たち兄弟。
住所など割り出せる筈もなく、毎年この行事など全く関わりもなく。
少年がこの東の地へ定期報告の為に舞い戻った時だけが、短い逢瀬。
互いの無事を確認し、喜び合う、それだけの。
だから、まさかこんな。

「不意打ちだ・・・っ」

未だ熱の冷めやらぬ頬をこすり、俯いた少年は。
振り返る事もせず部屋を出て行った少尉の後ろ姿を思い出す。
嗚呼、彼は自分が覚えていない事など、百も承知だったのだ。
日付などに意識を向けている余裕すらない事など、お見通しだったのだ。
その上で、自分が負い目を感じずに済むよう、偶然に思い出した振りまでして。
このカードを見た後に、少年が顔を見られたくないと思うのを見越して、外へ出た。

「・・・畜生」

嗚呼、その優しさが。
彼が大人であるのだと思い知らせる。
自分が子供であるのだと思い知らせる。
この、埋められぬ遠い隔たりを。
思い出させる。
解っては、いるのだ。
頭では、理性では、自分は誰に言われるまでもなく、彼と比べるまでもなく、子供でしか有り得ないのだと言う事は。
どんなに背伸びをしても、容易には届かない高さなのだと。
そんな事は、理解している。
仕方のない事だと、諦めねばならない事だと、理解はしているのだ。
けれど、ふとした瞬間の気遣いだとか。
穏やかに見守る視線だとか。
その、無性に与えられるだけの、愛情が。
時折、酷く哀しくて。
それ以上に、酷く悔しくて。
そしてそう思う事自体が、子供じみているのだと理解し、唇を噛む事しか、出来ない自分に、嫌気がさすのだ。

「・・・覚えてろ・・・ッ」

唇から零れたのは、宣戦布告。
いつまでも自分を子供扱いする男への。
一方的な、対抗意識。

「来年は、ゼッテェ、」

子供でも。
子供だから。
相手を思うこの感情を、偽りはしない。
ただ真っ直ぐに、純粋に、貪欲に。
届けと、伝われと、願うのは。
手放したくないと、叫ぶのは。
幼さ故の、特権。

「思い知らせてやるかんな・・・っ」

来年は、必ずカードを送ってやろう。
紅のカードに。
金色の、細い文字で名前を綴り。
白い紙面に、彼の人の瞳と同じ海色で。
彼の人がくれた、一文を。





密やかにほくそ笑む少年の、掌の中。
何よりも大切そうに包まれた封筒。





刻まれた言葉は。










【出会えた感謝と、変わらぬ愛を】
































間に合ったぁぁぁぁぁぁっ(叫)(吐血)

ネタがない上ストーリーを捻り出す優秀な脳すら持ち合わせていない自分がここまで辿り着いた事実に涙しながらまずは深く謝罪申し上げます(爆)

あぁ、恋人の祝日に何をしたかったのだろうか、自分。
全くもって理解不可能ですが、取り敢えず。

この、バレンタインに有り得ない薄暗さと、キスの一つもしやがらねぇCP小説と言うのもおこがましい駄文を、フリー扱いにする事をどうかお許し下さい(吐血)
しかも冗談にならない程短いし・・・!(崩落)

バレンタインなのにチョコレート話じゃないのは、製菓業者の陰謀に乗せられてたまるかと言う無駄な反抗心からだと言う事実は見て見ぬふりして頂けるととても有り難いです(殴)

そんな訳で、キスの一つもないこのCPと言って支障はないのか激しく疑問の残る駄文。
お気に召した方がいらっしゃれば、どうぞずずいとお納め下さいませ。
小躍りして喜ぶ所存で御座います(嫌)

それでは、お目汚し大変失礼致しました・・・!(土下座)










※後書き(と言う名の懺悔と弁解)は反転にて。

斎雅 月 拝



2005.2.14

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