夢を。
夢を見たのだと言ったら。

その夢が。
とても恐ろしかったのだと言ったら。

君は、私を嗤うだろうか。
君は、私に呆れるだろうか。

それとも。

君は、





† Drizzle †





東方司令部内。

「あら、エドワード君」

こんにちは、と。
雨の日は無能な大佐の、有能な補佐官である中尉の挨拶に、 エドはどこか居心地悪そうに挨拶を返した。どうやら今日は、礼儀正しい弟は一緒ではないらしい。 ぺこりと小さく会釈するだけにとどまる。だが、そんな事を気にする彼女でもなく。 今日は何の用事があるのかと、エドに尋ねた。

「えっと…ちょっと、大佐に用があるんだけど…」
「大佐に?」

こくりと、頷く。
中尉は僅かにその流麗な眉を顰め、御免なさいねと言った。

「今日は珍しく、仕事中なのよ」

雨だから。
珍しくと言われるのは少々情けない気がしないでもないが、 それが真実なのだから仕方がない。 今更、気にする人物など居るわけもなく。 当然のようにその言葉を流したエドが、言った。

「あ〜…じゃぁ、俺が邪魔しない方が良い?」

別に、そんな急がなくても良いし、大した用でもないし。
エドがなおも言いつのろうとするのを中尉が遮る。

「いえ、エドワード君なら構わないわ。きっと、大佐も喜ぶでしょうし」

それで効率が上がってくれれば、こちらとしても助かるし。
微笑を漏らしながらの、どこか背を押すような言葉。
そっか、と呟き、楽しげに笑ったエドが大佐の執務室を目指した。
その背を見送った中尉は、自分が小脇に抱えていた書類をしばし眺め、 そのまま踵を返した。 今日はもう、これ以上大佐の仕事が増える事はなさそうである。




中尉と別れてすぐ、エドは大佐の執務室の前へと辿り着いた。
仕事中だと聞いていたので、左手で遠慮気味にノックをする。が、返事がない。 もう一度、今度は少し強めにノックする。が、またもや返事はなく。 今度は右手でノックする。が、効果なし。

「大佐!入るぞ!!」

苛つき、言葉をかけると同時に扉を開いたエドの目に映ったモノは。

「た…い、さ?」

机に積まれ、二つの山を形作る書類の数々と、 頬杖を付いた格好で眉間にシワを寄せ、目を閉じる大佐の姿。
ゆっくりと、エドが近づく。

「大佐〜?」

机を挟んで向かい合う姿勢で呼びかけるが、反応はなく。 回り込んで椅子の横に立ち、再度呼びかける。

「大佐?た〜いさ、無能大佐、ヘタレ大佐」

かなり酷い事も口走りつつ、大佐の顔を覗き込むエド。 だが、どうやら本気で寝入ってるらしく全く何の反応も返しては来ない。 そこでエドは、しばし逡巡してから、大佐の名前を呼んだ。

「………………ロイ?」

常ならば瞬間的に反応を返す名前で呼んでみるも、全く反応しない。 どうやら、完璧に熟睡しているらしい。 それを確認したエドは、部屋の隅にあった一人がけのソファをずるずると引きずってくると、 机の横へ陣取った。そのまま腕組みをし、小首をかしげて大佐を眺めている。 どうやら、この滅多にない大佐の寝顔観賞の機会をじっくりと味わうつもりのようだ。

何だか、苦しそうに寝てんなぁ…眉間にシワ寄ってるし。
いや、苦しそうって言うか、窮屈そう…ん?一緒か?
てか、寝てる方が真面目そうに見えるってヤツ、そう居ないよなぁ…。
あ、前ハボック少尉も寝てる方が3割増し男前だって言ってたなぁ…誰か。

じー…っと、大佐の寝顔を見ながらどうでも良いような事を考えているエド。 ソファから離れ、大佐に近付き、顔にかかる前髪をはらってやる。 黒曜のような黒髪が、さらさらと頬にこぼれ落ち、その感触に大佐が身じろぎをした。 エドは慌てて上体を起こし、大佐との距離をとる。 だが、まだ起きる様子はない。

「…いい加減、起きろよなぁ〜。俺が来てる時に寝てんなよな〜…」

拗ねたように、頬をふくらませ。おもむろに、大佐の頬に口付けた。
と。

「…ッぅわ!?」

大佐は、それまで寝入っていた人物とは思えない程の力で エドの腕を引き、その腕の中に抱き込んだ。
決して、苦痛を与えない柔らかな拘束ではあったが。

「なッ…にするんだよ、大佐ッ!?」

当然の事ながら、じたばたと暴れつつエドが抗議する。
だが。

「…エドワード…?」
「………は?」
「エドワードが、いる…」

まだ寝ぼけているような声音で呟く大佐に、エドが首をかしげた。
大佐は今、自分の事を名前で呼びはしなかったか。普段ならば決して、司令部内では名前など呼びはしないのに。 混乱し、自分を見上げるエドに向かい、大佐は笑みを浮かべた。 いつもの。エドをからかう為の、人を喰ったような笑みではなく。
心底嬉しそうな、微笑み。

「よかった…」

吐息のように、ともすれば聞き逃してしまうような囁きとともに、 ふわりとエドの額に口づけを一つ、落とした。そして

「あいたかった」

どこか微睡むような声音。
ゆうるりと落とされた言の葉に、しばしの時間を経て、エドは顔に朱を走らせた。 逃れられない力で抱きしめられているわけではないのに、 逃れる事を望まない自分が居る。その事実に、エドは少なからず驚いた。
そんな事よりも、まるで子供のように、心中を吐露する大佐になどついぞお目にかかった事はなく。 それ故に、どう接したら良い物か戸惑う。
一つ、小さくため息を零して言った。

「…どうしたんだよ、ロイ」

今、此の場で「大佐」と呼ぶのは何故だか憚られて。 滅多に呼ぶ事のない名で、もう一度呼びかけた。
すると、もう一度エドの額に口づけを落とした大佐は、

「あいたかったんだ…」

エドの問いかけに答える事はせず。
ただ、金糸のような煌めく髪を梳くだけで。

「…仕方ねぇなぁ…」

苦笑したエドは、今日は雨だしな、と呟くと。 大人しく大佐の腕の中、躰を預けた。
窓の外には、降りしきる小雨。流れるのは、穏やかな時間。

「後で、何があったか絶対聞かせてもらうかんな」

自分を抱き締める腕に、僅かに籠もった力には、気付かぬふりで。
まぁ、たまには甘やかしてやるよ、と腕の中、密やかに笑う子供が一人。





大切なモノなど、もう二度と創るモノかと。
胸の奥深く、刻み込んだと言うのに。

淡い、一時の微睡みの中。
君が微笑むその姿が。

唯、ただ。
いとしくて、愛しくて。

君が、この手を振り解いて。
振り向きもせず行ってしまうのは何時だろうかと。

ただ、唯。
切なくて、刹那くて。



嗚呼。

もう、何もかもが手遅れだ。











こんなヘタレ駄目(腐)サイトにリンクを張って下さった方に、 御礼の意を込めまして書かせて頂きました。
初・ロイエド(?)駄文。

本当はロイにエドの事を「エディ」と呼ばせたかった…(殴)

・・・。

御免なさい、御免なさい。本当に申し訳ありません。
もうしません(嘘/ぉ)

なにとぞ、広い心で許して下さいますよう。 それと、これからも我がサイトの愚行を温かい目で見守って下さいますよう、 重ね重ねお願い申し上げます。

こんな駄作押しつけて申し訳御座いませんでした。



斎雅 月 拝









2003.11.16









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