分かり切った事だ。

初めから、分かり切った事。

イタイイタイと泣き叫んでも。

何も変わる事などなかった。

ただ、食って、寝て、起きて。

そうして生き抜いた先に、何があるかなんて、―――――










† 創 †










「いつになったらキミは心を開いてくれるのだろうね」

感情を見せず。
ただ表面だけの笑みを貼り付け。
アンタは誰も、迎え入れはしない。
そのくせ上辺だけ、歓迎する。
アンタのその、声が。
瞳が。
嫌いだ。

楽しそうに眼を眇め。
軽薄な笑みを浮かべ、のたまう。
俺の反応を待っている。
そして俺は、この茶番に付き合ってやる。
いつもの通り。
アンタの予想通りだろう言葉を。

「アンタがそれを言うのかよ」

表情を消し、感情を見せぬよう。
ただ、眼だけを逸らさぬよう。

くつり と、喉の奥で噛み殺される笑い。

「何の、事かな?」

わざと俺の神経を逆なでする言葉を選び。
わざと、言葉を句切って。
だけど、俺は乗ってやらない。
どうせそれすらも、アンタの予測の範囲内なんだろう。

「解ってる人間にわざわざ説明する義理はないね」

俺の言葉に。
さも、可笑しそうに笑う。
アンタのその、表情が。
言葉が。
嫌いだ。

「何、笑ってんだよ」
「いや、素直な返答だと思ってね」

ああ、そうだろう。
これで満足なんだろ?アンタは。
俺は決してアンタを裏切らない、適度にじゃれる小犬で。

もし俺が今、アンタに殺気を向けたとしたら。
アンタは一体どうするんだろうね。
一瞬のうちに消し炭にするのだろうか。
それとも。
情とか言うモノが幾らか湧いていて。
僅かにでも躊躇ったりするのだろうか。
…いや、屹度アンタは、躊躇いなどせず。
焔など出す事はなく。
笑みすら浮かべて、俺を消し去るんだろう。
嗚呼、どれも、くだらない仮説ばかりだ。

「それで、今日は…?」

頬杖を付き。
軽薄な笑みはそのままに。
常と変わらぬ声音で、問う。
ただ、その瞳は。
油断すれば、葬り去られる。
そんな、冷たい光を孕んでいて。
俺を、試している。

「たまには飼い主に尻尾でも振っとこうかと思ってね」

俺の飼い主は、アンタだろ?
鼻で笑って、言ってやる。
たまには意趣返しでもしなければ。
アンタはすぐに俺への興味をなくすだろうから。

「ほう…それにしては、随分と偉そうに見えるのだがね」

面白そうに笑い、言う。
其れすら、偽りかもしれないけれど。

「飼い主が飼い主だからな」

興味なさそうに。
無表情に。
それだけに気を向けて言えば。
キミも言うようになったね、と。
楽しそうな笑みを浮かべ。
冷めた瞳を押し隠す。

作られた、笑顔。
不釣り合いな、冷めた瞳に。
アンタは其れで、どれだけの人間を欺いているんだろうね。
どれだけの人間に、其れを悟らせているんだろうね。
自分への、畏怖を植え付けるために。

「…じゃ、もう帰るわ」

ソファから立ち上がれば。
おもむろに、手招きをする。
嗚呼、また。
その、笑顔だ。

「んだよ。アンタがこっち来りゃいいだろ」
「…相変わらず、つれないねぇ」

表情が、ゆるやかに。
「苦笑」に形作られる。

「そりゃ、どうも」

いつものように掛けられる言葉に。
常のようには激高せず。
つまらなそうに、応えを返す。

ふと、細められた眼。
その瞳に込められた感情なんか。
俺に、読みとれるはずもない。

ゆっくりと、歩み寄り。
俺を、見下ろし。
口を開く。

「あまり無茶を、しないように」

其の、瞳を微かに彩った感情を。
俺に見せたのは、単なる気まぐれだろうか。
それとも。
アンタは自分自信で、気付いていないのだろうか。

「………余計なお世話だ」

咄嗟に、言葉が浮かばず。
掠れてしまった声。
ふと、零れた笑みですら。
作られたモノだろうか。
俺は、そんな事、知りたくはないのに。
なのにアンタは、わざと、気付かせる。
俺がアンタに、畏怖など抱かぬ事を知っているクセに。
ただ。
試すように。

キミは、私のようになってはいけない

嗚呼、こんなにも。
言葉より鮮明に心を。
痛みを伝えてくる眼をしている事を。
アンタは、気付いていないのだろうか。
気付いていなければ、それで良いとも思う。
アンタは、いろんなモノを、背負いすぎているから。

「…それこそ、余計なお世話だ」

サイゴに。
笑って。
襟を掴んで。
引き寄せて。
唇を重ねてやったら。
眼を、見開いた。
ザマァミロ。
表情なんか、作れなかったろ。

「じゃぁな」

笑って。
離れて、一言。
きびすを返して。
ドアに手をかけて。

「気が向いたらまた来るかもしんない」

振り返らないで。
一言。

ドアを、閉める直前。
背中に。
降り注ぐ。

「あぁ。また、来るといい」

作られた、表情。
作られた、言葉。
たった数十分の、茶番劇。
胸の奥、疼くモノがあるけれど。
アンタがこんな事で楽になるのなら。
いくらでも、付き合っている。

だけど。
作り事だらけの箱庭で。
決まってサイゴに繰り返される。
アンタの、其の言葉が。
声が。
好きかもしれない。
なんて。

絶対。

言ってやらない。











言葉遊び。
どれが本物?
どれが虚像?

…そしてこれをロイエドだと言い張る自分。

嗚呼、もう、末期だ…。





斎雅 月 拝










2003.11.27

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